公募研究A03:高屈折率・高透過率シリカエアロゲルの開発
| 代表 |
住吉 孝行 |
東京都立大学大学院理学研究科 |
教授 |
高エネルギー物理学実験 |
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横山 勝 |
松下電工(株) |
主査技師 |
工業化学 |
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以上2名 |
研究の進展状況とこれまでの主な研究成果
Belle実験の粒子識別装置として、シリカエアロゲルを用いた閾値型のチェレンコフカウンターが、期待通りの性能で稼動している。このシリカエアロゲルは我々が新しく開発した製法で作成され、これまでにない高い透過率を誇っている。また、長期の使用にも安定して性能が維持できるように、シリカエアロゲルの表面に疏水化処理を施した。この方法は我々が独自に考案したもので、他では例を見ない優れた技術であると自負している。従来のシリカエアロゲルが空気中の湿気を吸って数年の間に使用に耐えられない位劣化していたものが、5年以上経過した現在も製作時そのままの透過率を有している。このように我々の製作したシリカエアロゲルは、数多くの優れた特長を持っている。
ところが、今述べた高い透過率は限られた範囲の屈折率(1.015〜1.035)でのみ実現されており、それ以下及びそれ以上の屈折率では、透過率がかなり悪化してしまっているのが現状であった。特にシリカエアロゲルを輻射体とするリング・イメージ・チェレンコフカウンターで必要となる屈折率が1.05付近のものは1.03のものに比べて、透過長が3分の1に落ちてしまい粒子識別性能を著しく損なっていた。
本研究は、これまでの製法をすべて見直し、屈折率が1.05付近でも高い透過率を有するような製法を考案する事。疏水化技術で使用した表面処理剤をの代わりに、同様の技術を用いて波長変換剤をシリカエアロゲルの表面に修飾し、チェレンコフ光で数多く発生する紫外光領域の光子を可視光領域に変換し、閾値型チェレンコフカウンターの性能の向上を図る事。以上2つの困難な目標を掲げてスタートした。ところが、幸運にもこの半年で最初の目標はほぼ達成できたと考えている。そのために我々は2つの改良を行った。1つは原材料の見直しであった。検討の結果、同一名の原材料でもそこに含まれている成分に若干の違いがあり、それが出来上がった製品の透過率に大きく作用していることが判明した。原材料を厳選することで透過率の向上が得られた。それ以上に効果が大きかったのが、溶剤を変えたことである。これまでは溶剤としてメチルアルコールやエチルアルコールを用いていた。これをジメチル・ホルムアミドに変更することで、屈折率1.03のシリカエアロゲルと同等の透過率が1.05のもので得られるようになった。出来上がった製品は見た目にもこれまでのものには見られない透明感がある。
第2の目標に関しては、シリカエアロゲルの表面にうまく適合して波長変換剤を修飾できるような化学物質の合成が必要であり、現在は前途多難な状況である。さしあたってはシリカエアロゲルの表面に波長変換剤を真空蒸着させてその性能の評価を行いたいと考えている。
研究成果公表の状況(主な論文等一覧)
(1) T. Sumiyoshi,
Invited talk given at RICH2002 (Pyros in Greek), Jun.5-10, 2002
"Review of particle identification detectors other types than RICH"
(2) P. Krizan,
Invited talk given at The 3rd workshop on higher luminosity B-factory (Shonan-village), Aug.6-7,2002
"Aerogel RICH"
(3). T. Sumiyoshi, SLAC Experimental Seminar, Sep.18,2002
"Present status and future upgrade plan of the Belle PID"
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